2014年9月8日月曜日

広島の土砂災害に学ぶ事





今年の夏はたて続けの台風豪雨で九州、近畿に大きな被害が出ました。今回、広島では8月20日の豪雨による土砂災害で70名以上の死者が出ています。土砂災害危険地域は全国で52万箇所もあります。日本列島は7割が山地、しかも、世界で4番目の多雨国。国土の10%の洪水氾濫区域に、総人口の約50%の人々が居住しているのが現実です。ですから 災害は「起ります」。「想定外」という言い訳ではなく、私達は自然災害大国に住んでいるという自覚が必要です。備えは悲観的に、震災後はポジティブに。ちなみに通常、死者行方不明者の数が日に日に増えます。災害直後は混乱状態で被害状況を把握できないからです。時には「情報が無い」ことは「被害が無い」のではなく、「被害が大きい」ことの情報でもあり得るのです。今回の広島土砂災害を防災の観点から検証してみたいと思います。


住民は自分の地域のことをよく知っておく

1)自分の住んでいる地域のことをよく知る。避難所の確認は言うまでもなく、地形、危険箇所、ガソリンスタンドや化学工場などの危険な場所、逃げる時障害となるものなども確認しておきましょう。海抜が低いところは津波などで浸水、水が長期引かない恐れもあります。今回、広島で被害の出たところは花崗岩が風化して出来た柔らかい「まさ土」で、これが被害を大きくした原因の1つと言われています。水に浸かると摩擦力が少なくなり滑り易くなる性質があるそうです。県域の2割はこうした土壌であるそうです。土壌にかかわらず、斜面、崖上、崖下は危険地域です。被害のあった住宅地は10%の勾配斜面に立っており、上から流れて来た土砂のスピードがあまり落ちなかったようです。やはり、自分の地域を知っておくことは大事です。

2)ハザードマップを役所から入手し活用する。こちらのサイトからも入手できます。
  http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/suigai_taisaku/index/menu03.htm

ハザードマップは洪水時の被害予測を示しています。ただ、浸水は河川の近くだけでなく、都心のど真ん中でも起ります。豪雨などで、短時間に多量に雨が降り、排水が十分でないとたちまち道路や地下道、地下街が浸水してしまいます。これを内水氾濫といいます。ハザードマップはあくまで目安で、危険マークがない所でも災害は起る可能性があります。安心しないで、様々なことを想定してみることは必要です。



避難とは難を避ける事であって必ずしも避難所に「行く」ことではありません。
豪雨の時は避難所に行く途中に流される危険もあります。避難所が危ない場合もあります。木造住宅に囲まれた公園などは大地震の時、火炎と煙に取り囲まれます)。水害、土砂災害に関しては垂直避難(遠くでなく、上へ)、また斜面の反対側の部屋へ。地震や放射能災害の時は鉄筋コンクリートの新しいビルの中が比較的安全です。


被災者が先ず、知りたいのは「何が起きたのか、どの程度の被害なのか、自分達のいるところはどういう位置づけなのか」「余震や、二次災害は?」です。緊急避難バッグの中に携帯ラジオがあると役立ちます。とくにコミュニティFM地域限定の詳細な情報が提供されますので役立ちます。また災害時には、デマや流言がインターネット上に飛び交いますので、信頼できる仲間同士でのフェイスブック、ライン、ツイッターなどでの情報交換が心強いです。




防災担当者へ、今後に生かす教訓

ここに書く事は決して行政の人達を責める意味ではありません。市職員は限られた人数で、またパニック状況の中でがんばってくださったことを承知しています。また、災害が深夜の豪雨の最中に起こり、避難が難しい状況だったことも分かります。ただ、今後のために検証してみましょう。

1  消防署に入って来た気象庁からの「今後1時間に70mmの降雨量の恐れ」という警戒ファックスを見落としてしまった。

とにかく、災害時にはパニック状態になり、こうした最も大事な情報を見落としてしまったりします。この状況下では、最も大事な情報だったのではないでしょうか? 危機の時の情報収集は命にかかわります。今後、情報収集だけに専念する責任者をはっきり決め、ファックス機の前にから離れず、優先ファックスに赤印をつけて、意思決定者に即持って行く体制が必要です。危機管理チームは、意思決定者の下に、情報収集担当、記録担当(後の検証のため)、通達/連絡担当の最低3役が必要です。会社、団体でも同じです。少しでも混乱を避けるため、前もって役割を決めておくことが大事です。

2. 警報サイレンが鳴らなかった。

誰が鳴らす判断をするか決まってなかったといいます。 「誰かがやる」は、「誰もやらない」と思ってください。防火管理においては、消防への連絡係、初期消火係、避難誘導係の3役を決めておくことになっています。そうしないとパニックの中、誰かが通報するだろうで、結局、連絡が遅れるという事態も起こりえます。ただし、豪雨の時はサイレンが聞こえない場合もあります。そうすると緊急メールが役立つのですが・・・

3.「緊急メール」を配信していなかった

  広島市の土砂災害で、市が発生当日に避難勧告・指示を住民に携帯電話で  
  伝達する「緊急メール」を配信していなかったことが4日、市への取材で
  分かったといいます。緊急メールは事前登録の必要がなく、市内にいる人
  の携帯電話に大きなアラーム音とともに避難情報を一斉配信する有効な情
  報伝達手段で、配信されていれば被害を軽減できた可能性があり、市は対
  応に問題がなかったか検証するようです。市は発生当日の8月20日、
     「(避難勧告・指示の対象地域より広範な)市全域に届いてしまう」として使用
  せず、配信地域が限定できる防災情報メールを配信してたのです。ただ、
  防災情報メールは事前登録が必要で、登録件数は市人口の4・7%にすぎ
  なかったのです

4.想定外の土砂が下流の住宅地に流れ込んだ

  ニュース記事によると・・
 「 広島市土砂災害で、大きな被害が出た安佐南区八木地区で、土石流の 
  発生起点が、広島県の想定より最高で約200メートル高い斜面だったこ
  とが31日、土木学会などの調査でわかった。広島大の土田孝教授(地盤
  工学)は、「想定よりも山奥で崩壊が発生したため、下流の住宅地に予想
  以上の土砂が流れ込み、被害が拡大した可能性がある。危険渓流の範囲を
  どのように設定したらよいか、基準について再検討すべきだ」と話してい
  る。」

  正確なハザードマップを作ること。それを住民に認知させ活用させること
  その両方が必要です。ハザードマップの作成は市町村に義務付けられていますが、
  マップがあっても、住民が知らなかったり、活用していなかったりするケースが多い
  です。危険地区には行政が日頃からチラシを配るなどして危険地域であることを認知
  してもらう努力も必要ではないでしょうか? 




次期首都圏地震に向けて

都心で大地震災害が起るとどうなるのか?想像力を働かせて考えてみましょう。

関東を襲う次期大規模災害は複合災害となります。家屋倒壊、広域同時多発火災、地割れ、ガス漏れ、電線ショート、停電、爆発、津波、浸水、落下物、液状化、そして二次的問題としての長期停電、長期食料不足、医療パニック、暴動、窃盗、瓦礫処理、インターネット上のデマによる混乱、仮設住宅スペース問題など。それに放射能汚染が加わるかも知れません。
(写真右下は関東大震災時の火災旋風)

行政の避難勧告遅れが指摘されますが、避難する住民の側にも問題があります。いわゆる「正常バイアス」です。「自分は死なないだろう」「ここには被害が及ばないだろう」と大多数に同調して何の根拠もなく「安心」してしまうのです。「みんながここにいるから大丈夫だろう」と避難しないのです。そして災害に会ってしまったケースが多いのです。「率先して避難」することも大事です。






長期的な避難生活については冷静に判断してください。避難所は通常満員になります。プライバシーもなく、ストレスが溜まります。家が住める状態なら自宅避難がいい場合もあります。ただし、その場合は物資が届かない可能性もあるので、近隣へのボランティア活動(物資のお届け)が始まってから連絡して、移るのが良いかも知れません。病院も満員になります。生命にかかわるシリアスなケースのみ受け付けることになります。軽傷は自分で手当てできるようにしておきましょう。おそらく一番現実的に役に立つのは救急手当の訓練でしょう。止血や包帯の巻き方など、消防署や赤十字での訓練を受けておくのが望ましいです。誰もがお互い助けられる状態にしておきましょう。被災者が被災者を助ける事態となるのです。




震災直後は、長距離は移動できないので、コミュニティFMなど地元情報が一番役立ちます。住民も行政まかせではなく、主体的に自らの地域について調べ、指定されている避難所の安全状況などを確認することも必要かも知れません。通常は行政お任せ8割、自分2割くらいの感覚ですが、防災に関しては自分8割、行政2割くらいのつもりで取り組むのがいいのではないでしょうか?ある市では市が率先して市民災害ボランティアを養成し、災害時のボランティアセンター立ち上げの働きをしてもらうことにしています。まだまだ避難所の受け入れ態勢が十分でないところが多いようです。

防災課の職員も限られているので、やはり、住民の主体的な行動が大切になってきます。古くから住んでいる方々はネットワークがありますが、新興住宅地の場合、お互いを知らないケースも多く、また古くから住んでいる人達のグループと新しい移住者のグループとの交流もない場合があります。意図的なコミュニケーションの「場」つくりが課題となってきます。
 
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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳
contact@crashjapan.com






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