2014年2月14日金曜日

都心の高層マンション対策





(中央区佃のリバーシティ21)

都心では、地域によって住宅の型が多様で被害の出方も違ってくる。練馬区、中野区、杉並区、世田谷区といった住宅街では、低層の家屋が密集しており、倒壊や火災、墨田区、葛飾区、荒川区などでは、それに加えて水害や液状化の問題も出てくる。中央区では高層ビルの課題がある。高層マンションの高層階は大地震の時、離れ小島になる。いわゆる「高層階難民」である。中央区ではマンションの立地特性を以下の4つに分けている。


1.超高層・高層住宅集中地区:リバーシティ、晴海等
2.超高層・中高層・低層住宅混在地区:月島駅周辺、勝ちどき駅周辺
3.超高層+中高層住宅混在地区:日本橋人形町等
4.中高層住宅混在地区:日本橋中州、浜町、東日本橋等


高高層は20階超、高層は6−20階、中層3−5階、低層1−2階としている。比較的新しい超高層、高層マンションは大半が不燃で、オープンスペースも多く、広域避難所としても指定されている。建物周辺にも共有スペースが多い。低層木造住宅が混在している月島周辺では、延焼拡大からの、また浸水からの避難が必要となり、マンションとして周辺町会、自治会に協力できること、提供できることを検討し、連携してゆくことが望まれる。

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中央区では区主催で、マンション関係者を対象に「マンション防災講習会」を行っている。1月25日の講習会には、筆者もオブザーバーとして参加させて頂いた。NPO法人東北マンション管理組合連合会会長の紺野氏より、「東日本大震災から学ぶ」として貴重なお話を頂いた。仙台市内のマンションでは免震耐震設計で大丈夫と思い、地震保険に未加入だった世帯が13%あった。仙台市の建物被害認定によると一部損壊が46%、半壊が26%、全壊は9%であった。津波による被害だけがフォーカスされていたが、仙台市内のマンションには全壊しなくとも、相当な損傷があったことがわかる。ちなみに地震による死者は3名であった。復旧に関しては、人手不足と資材高騰で工期や費用が計画通りには進んでいないという実態が明らかになった。現在、2020年のオリンピック関連の建設にも労働者不足で、外国人労働者に頼らざるを得ない実態が明らかになっている。今後の東京の震災後の復旧に関しても深刻な問題となりそうだ。また3:11の東北の物不足、燃料不足の経験から最低3−7日分は自分で備蓄が強く勧められた。また、安否確認のため災害用要援護者のリストを自己申告で作成し、理事長など限られた責任者が、それを保管、管理する、安否確認では、大丈夫な場合、白いタオルを援助が必要な場合、赤いタオルをベランダに出すというアイディアも分ち合われた。安否チェックリストも名前の羅列ではなく、マンションの部屋位置で確認できる図式の名簿が推薦された。

地震直後5分の対応が鍵。自分の命を守り、出火防止、我が家の安全確認ができたら、隣近所の安否確認/助け合いに移る。本格的な復旧作業は3日以降となるので、自主的に避難所開設、運営を始める必要がある。自主防衛の決め手は日頃からのコミュニケーション、顔の見える関係作りであることが強調された。マンションでは、日中、夫が仕事に出ていて、幼児を抱えた母親や高齢者が一人で住んでいる場合も多く、隣のオフィスや近くの商業施設との連携、協力体制も語られた。


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平成25年1月、中央区月島の某タワーマンションの防災対策検討会にオブザーバーとして参加させて頂いた。そこではマンション管理会社が地震の備えについて住民に行ったアンケート集計結果が報告されていた。結果は以下のごとくである。


   家具の転倒防止対策は6割。4割はやってない。ガラス飛散防止を行っている世帯は25%と少ない。寝室にスリッパを置いてある世帯も約4割。

   けが人が出た場合の応急措置について、できない世帯が半数以上。(消防署などで行っている救命技能講習を受ける事が望ましい。)

   災害時の家族の連絡方法について決めてない世帯が約6割

   飲料水は4割、非常食は5割が備蓄しておらず、簡易トイレは6割が備蓄していない状況である。

   マンション内の防災備蓄倉庫の開け方を知らない世帯は約26%。

   排水の使用制限を知らない世帯が5割。災害汚物の処理方法を知らない世帯は約7割。(管理会社などの安全確認が取れるまで排水使用は制限される。排泄物などの汚物処理は排水が可能になるまで各階の責任で保管することとなっている。毎回、処理するのではなく消臭剤をかけ、少し溜まったら袋をしばって、上下水道の復旧まで、各戸で保管する。)

   同じ階に住んでいる人を2割ほど、あるいはほとんど知らない世帯が約4割。(顔合わせ訓練から始める事が重要)

   平日、昼間に誰もいない世帯が約4割。高齢者のみの世帯も1割弱。


これによって分かるのは、防災意識啓発が必要なことと、具体的な防災アドバイスが必要なことだ。震災時には停電によりテレビが見られず、電話も通じない中、インターネット等で情報を収集できる人、外国語が出来る人を対策本部に情報班として確保することも必要。実は大世帯のタワーマンションではいろいろな技術を持った人がいるはずである。ここでも普段からの「顔の見える関係」が生きてくる。

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最後にマンション特有のエレベータ閉じ込め問題に触れておこう。今回の都心南部地震では、停電や揺れでエレベーター約3万台が停止し、1万7400人が閉じ込められるという。管理会社からの助けもすぐには期待できない。中央区ではオフィスビルのエレベーターに緊急用のボックスを設置することを進めていると聞いている。災害時エレベーター救出訓練を行っているエレベーターメインテナンス企業がある。2時間ほどの講習で、エレベーターの仕組みを勉強し、実際の救出訓練を体験する内容だという。ご関心ある方は、i-tec24防災コミュニティコーディネータ-(03−5301−5231)(http://www.i-tec24.net)まで。



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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士
栗原一芳
crashkazu@gmail.com