2013年12月10日火曜日

日本列島が動き出した



ニュース アップデート(1)

日本列島が動き出した
「データを見て、本当にびっくりしましたよ。これは東日本大震災のときと同じじゃないかと」東京大学名誉教授の村井俊治氏は、いまでもその驚きが覚めやらないかのように、そう語りだした。「初めは今年6月末、九州・四国・紀伊半島で異常変動がありました。それが91~6日に、日本全国が異常な変動を起こし、私たちのシステムでは日本地図が真っ赤になったんです。その次の週は逆に変動がなく、大変静かになったのですが、東日本大震災の前には、こうした変動と静謐期間が半年ほどの間に3回、繰り返されました。そうした経験から、私たちは今年12月から来年3月頃の期間に南海トラフでの大地震が起こる可能性が高いと考えたのです」この冬、南海トラフでの大地震が起こる。衝撃的な予測だが、実はここまでの話ならば、村井氏らは過去にも取材で訴えてきたという。ところがいま、事態はさらに悪化しているというのだ。
(「現在ビジネス」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37571




(コメント)
図を見て頂きたい、GPS観測によると、このように日本は外部のプレートにより東西捻れて圧力がかけられている。東日本は3:11でエネルギー放出され東に動いている。逆に西日本はフィリピン海プレートのプレッシャーで西に押されて来ている。以下、国土地理院の報告。
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国土地理院によりますと、巨大地震の直後、宮城県の牡鹿半島が東へ5メートル30センチ、東京・港区が東へ27センチ移動するなど、東北や関東を中心に地盤が大きく移動しました。地盤の移動は、東北地方の太平洋側を中心に今も続いていて、この2年間で、宮城県の牡鹿半島はさらに74センチ東へ移動しました。これは、巨大地震のあと、陸側のプレートが海側のプレートの上に乗り上がるような、東向きの移動を続いているためと考えられています。一方、関東の西側や甲信越、青森県北部、それに北海道南部では、地震の直後地盤が東へ移動したあとにゆっくりと隆起しています。隆起が確認された地域やその付近では、先月25日に栃木県日光市で震度5強の揺れを観測する地震があったほか、巨大地震直後には長野県栄村や静岡県富士宮市で震度6強の揺れを観測する地震が起きています。また、政府の地震調査委員会が巨大地震のあとに地震が起きる危険性が高くなっていると発表した、神奈川県の「三浦半島断層群」、東京と埼玉県にまたがる「立川断層帯」、「糸魚川・静岡構造線断層帯」のうち、長野県の「牛伏寺断層」も、隆起した範囲に入っています。国土地理院の西村主任研究官は、「糸魚川・静岡構造線断層帯や立川断層付近でも地盤の変動が今も続いている。震源から離れた地域でも、地震には注意が必要だ」と話しています。
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東日本では3:11以来、余震は今も続いている。そして震源が宮城、福島、茨城、千葉と南下してきている。あれだけ太平洋プレートが動いたことを考えると、南側でフィリピン海プレートと隣接する房総沖東、ないし、相模トラフに影響が出ることは考えられるのではないか? それで、東京都も首都圏直下地震のパターンに周期的にはまだ余裕があるはずの元禄型関東地震(相模トラフを震源とする関東大震災型地震)も想定に組み込んでいる。また、最近は火山活動により、小笠原諸島に新しい島が出現。これは富士火山帯に属する火山帯だ。



ニュースアップデート(2)

小笠原の火山新島:大地震の前兆か 関東で3週連続M5

毎日新聞 20131205日 1643分(最終更新 1205日 1955分)


 11月20日には、小笠原諸島・西之島の南東約500メートルで1974年以来の噴火が確認され、新島が出現した。溶岩が流れ出ており、波の浸食に耐える島に成長しつつある。この噴火は本土の地震や火山活動と関係があるのか。米地質調査所によると、50年以降、世界ではM9以上の巨大地震が東日本大震災を含め5回起きているが、東日本を除く4回の地震では数年以内に近くの火山が噴火している。「東日本大震災は東日本がのる北米プレートと太平洋プレートの境界で起きたものですが、西之島はフィリピン海プレートにのっています。地震にかかわったプレートと違うことと、東京から南へ1000キロ離れていることを考え合わせると、東日本大震災に誘発されて噴火したものではないと思われます」と武蔵野学院大学の島村英紀(ひでき)特任教授(地震学)。「西之島は富士山から伊豆諸島、小笠原諸島へと連なる富士火山帯に属しています。西之島と富士山は地下でマグマがつながっているかもしれないが、そうだとしても距離があるので互いに影響を与えることはないでしょう」と話す。

(コメント)
沖縄大学名誉教授の木村政昭氏の見解によると2015年までに、富士山噴火が起るという。また南海トラフに関しては、今年、フィリピンと台湾で大きな地震が発生し、実は、沖縄地域で小さな地震が頻発している。しかし、九州から伊豆半島という南海トラフ震源域となるエリアでは不気味なほど地震が起っていない。その代わり、淡路島や大阪南など内陸の断層上で地震が起っている。これはフィリピン海プレートに西日本が押され、すでに亀裂のある内陸の断層あたりで地震が起っていると思われる。四国は過去70年間に2.7m西に動いている。確実にプレッシャーは溜まってきている。それらを考え合わせると南海トラフ地震も近いのか?

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ニュース アップデート(3)
首都直下地震の被害想定の見直しを進める中央防災会議の専門委員を務める河田恵昭(よしあき)・関西大教授が、マグニチュード(M)7・3の首都直下地震による経済被害が300兆円に達するとの試算をまとめた。従来の国想定の約3倍で、国の一般会計の3年分を超える。東京都内で20日にあった21世紀文明シンポジウム「減災~あすへの備え」(ひょうご震災記念21世紀研究機構、朝日新聞社主催)で明らかにした。

(コメント)
300兆円というと、南海トラフ被害総額の220兆円を上回る。国家予算の3年分。もちろん世界都市東京壊滅となれば影響は世界にも及ぶ。国債の暴落、円激安など経済界にも激震が走るだろう。この被害額には原発汚染問題は含まれていない。しかし、震度6以上の激震が原発立地エリアを襲えば無傷ということはあり得ないだろう。南海トラフ巨大地震の死者予測もアップデートされた。死者は13万人、ただし迅速避難で9割減(大阪府想定/毎日新聞 20131030日 大阪夕刊)となっている。

どうも、これらの被害予測と現実の危機管理対応が乖離していると感じざるを得ない。2020年の東京湾岸でのオリンピックも予測される東京湾北部地震の震源中心地だ。東京23区の7割で震度6強以上という東京湾北部地震に対して首都機能移転は進んでいるのだろうか?今日、政府は、企業でのBCP(事業継続計画)を推進しているが、行政機関の事業継続計画はきちんと話し合われているのだろうか? 霞ヶ関ブラックアウトの場合には、現実には全国知事の役割が大事になろう。政府の災害時危機管理本部に関しては、官邸が破壊された場合、災害本部長となる首相と官邸危機管理機能は立川防災館ないし、国土省が管理する有明にある、東京臨海広域防災公園内防災体験学習施設内のオペレーションルームに移動することになっている。これらの施設は免震構造になっており震度7を震度4に軽減できることになっている。ただし、有明のほうは海岸で津波が心配される。有明施設のサイト:

食料、物資補給基地としては東扇島が指定されている。自衛隊の防災訓練も荒川や都内で行われている。しかし、東京は消費地ではあっても生産地ではないことを考えると、南海トラフで西日本がやられるとシリアスな問題となる。
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南海トラフ巨大地震で最大950万人の避難者が1日当たり3食、3リットルを消費すると、1週間合計で9600万食、14・7万トンもの食料と水が不足する。毛布も520万枚不足する。全国のペットボトルの水は数日で底を突く。阪神大震災でも水不足が生じ、住民は破損した配水管から道路上にあふれた水をくんで急場をしのいだ。南海トラフ巨大地震では、そうした深刻な水不足が広域で長期間続く恐れがある。買い占めも全国的に発生し、物資はさらに枯渇するとの見立てもある。仙台市は東日本大震災後、それまで「3日間分」と呼びかけていた備蓄の目安を「1週間分が安心」に変更した。同市の担当者は「3日分では不十分だと身にしみた」と説明する。
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(南海、東南海、東海 3震源域連動地震のケース、震源域は1000キロに渡る)



東京は関東大震災、東京大空襲と2度にわたって破壊されている。そこから不死鳥のようによみがえり、1964年の東京オリンピックの時、インフラが整えられ今日の繁栄を見ている。しかし、それから50年、インフラは老朽化している。大事なことは単なるインフラ整備ではなく、どういう価値観で新しい東京を築いていくのか?「復旧」は元に戻す事、「復興」は新しい価値観で都市創造をしてゆくこと。「復興」はより質の高いものにしてゆくことが含まれる。さて、3:11から学んだものを、どう生かして日本を再建するのか?3:11の直後は以下のようなコメント聞かれたこともあった。

「この大震災は日本の次の生き方を考えなさいと神が与えたチャンスと考えるべきだ。(安斎隆 セブン銀行会長  読売新聞2012年1月18日論点)

しかし、現内閣は民主党の2030年までに原発廃止の方針を転換。原発を基本エネルギーとする方針を打ち出している。世界の巨大地震の2割は日本周辺で起っているというのに。復旧はしても、復興しているのだろうか?同じ過ちを繰り返さないと誓っても歴史は繰り返してしまうのか?



どうも同じ日本に逆戻りしている、いやそれ以前に逆戻りしているような気がしてならない。

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災害支援団体クラッシュジャパン次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定 防災士
栗原 一芳
crashkazu@gmail.com



2013年11月26日火曜日

避難所 Q&A



 地震は約10秒。避難所が消えたのは5年後でした。(阪神淡路大震災)





Q. 避難所には地域住民だけしか入れないの?

必ずしも地域住民に限定されず、たまたまその土地を訪れていた旅行者なども対象になります。ただし、避難対象住民に対して指定避難所の収容力は平均3割ほどと言われています。筆者の地元では、避難対象住民9000人に対して650人ほど(約7%)しか収容できない避難所もあります。また、行政が指定している避難所が川べりだったり、液状化の危険があったりするため、自治会が自主的に、より安全な場所に避難する計画を立てている地域もあります。また、外国人の避難先は言葉の問題もあり、日本人一般の避難所とは別に、インターナショナルスクールなどが指定される場合がありますが、日中に災害が起れば、学校の生徒や先生達で体育館は一杯になってしまいます。また、避難所に指定されていても私立学校の場合、使用した体育館のダメージなどの修理費が市町村からは出ないので、行政との協力関係がうまくいってないところもあります。現実的なシュミレーションをして事前によく話し合っておく必要があります。

東京の場合、単純計算で東京ドーム12個分のスペースの避難場所が足りないと試算されています。最悪70万人ほどが避難所に入れず、疎開などの方法を考えざるを得なくなります。阪神淡路大震災被災者の声、「小学校の避難所に行ったが、そこはもう満杯で入り込む余地が無かった。トイレを借りようとしたが、はなはだ汚く、用が足せなかった。」「家族の少ない人は出かけている間に、確保しているスペースがだんだん狭くなる。」「傾いた家でも、あるなら帰れと避難所できびしい声だった。」これが現実だろう。



Q. 避難所の運営は市町村の職員がしてくれるんでしょ?

職員も被災します。また、災害発生時には自治体は被害状況の把握、必要な物資の確保、危険箇所への対応に忙殺されるため、避難所に十分な数の職員を配置できなくなります。従って、避難所の運営は、原則として避難者を中心とした自治組織によって行われることが望ましいのです。理想的には事前に「避難所運営委員会」を自治会ごとに立ち上げて、部屋割り、役割分担などを話し合い、準備しておくことです。



Q. 避難所運営に関して何を考慮しておくべきですか?

1.施設管理者と協議し、「避難所スペース」と「非避難所スペース」を明確に区別する。学校が避難所となる場合は教員室や理科実験室などは立ち入り禁止にしておく。

2.避難所スペースを「共有部分」と各世帯の生活の場としての「居住部分」に分ける。部屋割りは世帯を単位として行い、可能な限り血縁や居住地域を考慮した部屋割りが望まれる。目安となる一人当たりの面積は最低でも2平方メートルを確保する。また、要介護者、妊婦、乳幼児世帯などは、和室、冷暖房がある部屋などを優先して割り当てるなどの配慮が必要。さらに旅行者、外国人やペットを連れてくる人の配置問題もある。また、運営委員がミーティング等で使う本部室も確保しておく必要がある。仮設トイレの設置場所、物資搬入箇所、物資保管場所も確保する。以前の災害から学べる事は、雑然と避難民を入居させるのではなく、以上のことを考慮しつつ計画的にスペースを割り振ることが重要で、体育館にびっちり詰めないで、トイレに出る通路、車いすが通れる通路を計画的に確保して配置することが重要である。また、大きな避難所では負傷者が次々に運ばれてくるので、トリアージをする場も必要となる。



3.一人暮らしの若者や高齢者が増えるなか、集団生活に慣れない人が避難所で生活を共にすることになる。当然、多くのストレスが予想される。厳しい環境の中で、少しでも快適に生活するため、最小限の生活ルールを定め、避難民全員で守ることが必要となる。ルールつくりのポイントとしては、地域の実情に合わせ、わかりやすく、シンプルに複雑にならないように心がける。事態の推移によって見直す必要もある。

        いずれにしてもリーダーがいないと統率がとれず混乱する。リーダーの下にすばやい  
        役割分担が必要。



Q. 避難所開設の手順はどうなるんですか?

1.避難所の確認 (自治体が指定するが、その避難所が安全かの評価も必要。)

2.避難所マップなどで、住民に避難所の場所を知らせる。

3.避難所の開設 (誰が体育館や備蓄倉庫の鍵を持っているか事前に確認)

4.避難者名簿の作成 (誰が何人いるのか把握しておく)

5.仮設トイレの設置 (高齢者が使いやすい位置で、十分な数のトイレ)

6.部屋割り、救援物資置き場等の指定 (居住区、非居住区の指定なども)

7.入居している避難民へのアナウンスの方法確認(場内アナウンス、掲示板)



Q. 避難所で特に配慮することは

1.阪神淡路大震災では、避難所で多くの高齢者が亡くなり、震災で亡くなった人の14%を占めるに至った。いわゆる震災関連死である。高齢者への配慮は大きな課題となる。

2.避難場所ではトレイの数が著しく不足し、しかも仮設トイレは居住スペースから遠くに設置されている場合が多い。そのため高齢者はトイレにいかなくていいように飲料水を控え、結果的に体調を崩してしまう。トイレの位置なども高齢者に近いところにするなど考慮が必要だ。また、トレイが不足するのは目に見えているので、多めに緊急トイレを自治会単位で用意しておくことをお勧めする。




3.避難場所が不快であるとの理由で車で寝泊まりする人もいる。それでエコノミー症候群となる人もいる。また、避難所ではストレスが多く、運動不足になるので、生きる気力を失う「生活不活発病」となる高齢者も多い。すこし落ち着いて来たら、避難所でのラジオ体操など、少しでも体を動かせる機会を作ることが助けになるだろう。人々が孤立しないよう、日常生活の中で地域住民が触れ合っていることが大切だ。

4.着替え時など、女性のプライバシーを配慮したスペースつくりも必要。残念ながら、このような非常時にもセクハラが起こりえる。

避難生活が長引くことになれば、次は仮設住宅入居となる。応急仮設住宅は災害救助法で規定され「住家が全壊、全焼、または流出し、居住する住宅がない者であって、自らの資力では住家を得ることができないものを収容する」となっている。使用期限は2年が原則で、使用料は無料だが、水道・光熱費は入居者負担となる。ただし、問題は土地探しである。東日本大震災では、水に浸かってない、土砂災害の無い用地を見つけるのが困難であった。用地があっても土地に住戸を目一杯建設して、集会所などを建てる余裕が無い場合もあった。あるいは、狭い駐車場のみが子供の遊び場という所もあった。また抽選であちこちに住民が散在してしまったので、元のコミュニティとの断絶、高齢者の集積などがあり、孤立した住居者の孤独死が多く現れた。今後はできるだけコミュニティ入居の実現、仮設店舗などの生活支援施設の併設が要望として揚げられている。



個人が自力でつくる仮設住宅の場合、法的担保はない。市町村が民間賃貸住宅を借り上げて提供する「みなし仮設住宅」もある。家賃は一戸当たり月額6万円とした前例を参考にすることになっている。ただし、この場合、被災者が入居していることがわかりにくく、ボランティアが物資を運んで来ないという問題があった。

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おすすめ本
「地震イツモノート キモチの防災マニュアル」 ポプラ社


阪神淡路大震災の被災者の生の声が散りばめられ、実際的。ポケット版で、図も多くさっと読めます。幾つかの名言引用

「ライフラインが止まる。それは原始生活以下になるということです。」

「地震の瞬間は何もできないと考える」

「揺れた瞬間何もしない。地震に強いとはそういうことかもしれません。」

「隣の人とあいさつしている、それが大きな防災でした。」

「非日常が日常に変わっていく、避難所の共同生活。」

「防災といわない防災。モシモをイツモに」

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災害支援団体クラッシュジャパン次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定 防災士
栗原 一芳
crashkazu@gmail.com


2013年11月5日火曜日

東京湾の津波






揺れを感じなくても大津波が来ることがある

「地震津波」は海底下の比較的浅い所を震源として大きな地震が発生すると、断層運動により海底地形が変動し、それが海水に伝わり、海面が上下することにより津波が発生する。断層破壊がゆっくり進行すると、断層がヌルヌル動き、陸上では強い揺れを感じない。しかし、津波は発生する。1960年のチリ地震津波では北海道から沖縄にかけて142名の死者が出た。遠方で起った地震で日本で揺れを感じなくても津波が襲来し犠牲者を出す事がある。現在ではハワイにある「太平洋津波警報センター」が環太平洋のどこの海域で発生した津波に対しても、各国の地震観測網のデーターをただちに分析して、津波の規模や、進行方向、到達時刻などを推定し、諸国に対して速やかに津波情報を伝達する体制が整備されている。


津波の特徴
1.津波の速さはジェット機なみ
太平洋の平均水深4000メートルでは、津波は時速700キロというジェット機並みのスピードになる。

2.津波は何波も来る
震源域からの津波はひとつであっても、沿岸部での入射、反射、湾内震動などで、何波もの津波が発生する。沿岸には時間間隔をおいて、津波が複数回襲来する。南海トラフ地震の予測では静岡市に13メートルほどの津波が来るが第一波は2分で到達するという。そして、第一波より、二波、三波のほうが高いケースが多い。いずれにしても第1波が去ったからといって安心してはならない。海岸に出る事は禁物である。

3.津波は湾奥で高くなる。
海に向かってV字に開いている湾は、入り口が広く、奥へ行くほど狭くなるため、津波のエネルギーが奥に向かって集中し、波高が大きくなる。東京湾の場合は入り口が大阪湾に較べて狭く、湖底も50mほどで比較的浅いので大きな津波は発生しないとされている。ただし後述するように、被害が出ない訳ではない。

4.津波は川を遡上する。
       2011年東日本大震災では、北上川を40kmも遡上している。南海トラフでは大阪  
       湾や名古屋湾に5mの津波が襲来するとされているが、何らかのトラブルで防潮堤を超
      えてしまえば、津波は川を遡りまた、道路を進行し、JR大阪駅、JR名古屋駅周辺にまで
      浸水が及ぶという。冬の午後6時、大阪で低避難率の場合の想定では、津波で13万
      2967人(うち1万8976人は河川の堤防崩壊に伴う浸水で死亡)が犠牲者とな 
      る。




津波から身を守るには
津波は1mで死亡率100%といわれる。たとえ20cmでも大人が転倒する。一回限りの波ではなく、水の壁の圧力だからだ。海岸で強い揺れを感じたら、すぐに避難する。なるべく鉄筋コンクリート造の建物のできるだけ高い階(できれば5階以上)を避難場所とする。津波は建物を壊し、壊した瓦礫を漂流物として運ぶので二次災害が起る。さらには海岸のコンビナート等が漂流物の衝突で爆破し火災がおこれば、火炎を内陸に運び込む可能性もある。ただし、全国最大規模の梅田の地下街の浸水被害や、東日本大震災で深刻な被害をもたらした津波火災は、「想定する手法が確立していない」(府防災企画課)などとして想定には含まれていないのが気になる。ともあれ津波/浸水の場合は「遠く」より「上」に逃げることが鍵となる。火災や浸水が無い限りは地下道は比較的安全な場所ではあるが、浸水の可能性があるときは、すばやく地上に出る必要がある。


伊豆諸島では巨大津波
今回、東京都大島での台風被害が注目された。南海トラフ地震では、東京湾には巨大津波はないものの、伊豆諸島では巨大津波が予想されている。大津波高は、新島で30.16メートル、式根島で28.15メートル、神津島で28.43メートル、八丈島で18.07メートル、青ヶ島で17.68メートル、三宅島で16.98メートル、利島で16.18メートル、伊豆大島で15.76メートル、小笠原諸島の父島で18.52メートルなどと想定。到達時間は15分程度(新島)と見ている。ちなみに、鎌倉で10m、千葉館山で11mの予想。




 東京湾は大丈夫か?
総合危険度マップをご覧になれば分かるように、隅田川沿いの江東区、墨田区、台東区、荒川区、江戸川区、葛飾区あたりが最も危険度が高い。この地域は海抜が低く、津波、川の氾濫、さらに古い木造建築も多く、火災や倒壊も起りやすいからだ。いわゆる「川の手」地区は江戸時代にはまだ、大湿地帯で人が住める場所ではなかった。江戸川区では川の氾濫により5.5メートルの浸水が想定されており、67万人の住民のうち3階に避難できる人の数は13万人、他の人々は逃げ場を失ってしまう。早急に避難場所の「高台」作りが必要となる。台東区の浸水ハザードマップを見ると区のほとんどがブルーで塗られ浸水の可能性が示されている。上野の山に避難するよう指示されている。


大都市、東京は防波堤で囲まれている。堤防の高さは平均3.5m。しかし、部分的には築40年を過ぎている。老朽化が懸念される。また、液状化や激震で堤防が沈下したり破壊される可能性もある。もともと東京や大阪、名古屋といった大都市は河口にあり、大昔は海だったところで地盤は強くない。堤防に守られている都市なのだ。品川区の防災館のパネルには満潮時に2.2メートル、津波で1上がっても堤防は3.5あるので大丈夫とあるが、最近の政府の南海トラフの予測では、品川は3mの津波とある。



基本的には水門が閉鎖されていれば堤防内への浸水は見られず人的被害は発生しないことになっている。過去の関東の大震災を基にしたシュミレーションから割り出した東京湾の水門の津波高が図に示されている。想定は水門閉鎖時で、地殻変動を考慮した値となっている。中央区で最大津波高2.51m。江東区では最大2.55m。問題は激しい揺れで水門のレールが歪んだり、停電になった時、果たして水門を降ろして津波をシャットできるのかである。しかも、湾岸は液状化の被害も出やすい。東京湾北部地震(M7.3)の想定では中央区最大津波高1.88m、江東区1.75mとなっている。



先日、取材に行った両国橋では写真のように、通常でも川の水面から岸辺テラスまで20センチくらいしかない。堤防も3メートルあるかないか。堤防への反射などで高さを増した津波の遡上波が堤防を超えないだろうか?3:11の時、震度5強でも隅田川では岸辺テラスへ浸水があり、1.46mの津波が観測されている。首都圏直下型では湾岸は震度6強から7の激震が襲う。行政としてはハザードマップの活用を勧めてはいるが、持っている人は15%ほどだという。

こちらにもわかりやすい説明が載ってます。







地下鉄は大丈夫か?
地下は地上に較べ揺れは軽減される。また大江戸線など新しい線は耐震設計となっていると聞く。しかし、銀座線や丸の内線は老朽化しており、トンネルの壁からの浸水が心配だ。東京の地下水が20m−40m上昇している問題がリスクをさらに高めている。大地震でホーム壁にダメージがあれば、水が流れ込む可能性がある。3:11時、飯田橋駅の壁から謎の水漏れがあったという。また、秋庭俊氏の「大東京の地下99の謎」(二見文庫)で「千代田線国会議事堂前駅のホームの壁は水が染み出ており、排水路には音を立てて常に相当の水が流れている。」とあるが、現在は水の音は聞こえない。ただし、水漏れのほうは本当だったようで、現在漏水工事をしている。トンネル自体は写真のように金属の補強板が張り巡らされ、見る限りは、かなり丈夫な印象を受ける。




東京は地形的に高低がある。丸ノ内線は地下鉄なのに、後楽園駅は地上にある。地下鉄の場合、高いところで水が出れば、ひと繋がりのトンネルなので低い他の駅へと流れてゆく。湾岸の低い駅で浸水が始まれば、さらに水はそこに溜まってゆき駅が水没することになる。「荒川土手が北区で決壊」の想定をすると、地下鉄入り口に高さ1mの止水板を設置しても、東京都市部の130駅のうち最大で81駅が改札階まで浸水。3時間で大手町にも到達。ゼロメートルでなくても地上に水が到達しない霞ヶ関や六本木駅でも浸水することがわかった。地下鉄路線網が水路の役割を果たして被害が広がるからだ。シュミレーションにかかわった関西大社会安全学部長 河田恵昭教授は「震災対策で最も遅れているのが地下鉄の水害対策と断言する。また地下鉄の地上入り口から水が流れ込み始めると、下から階段を昇るのが困難になる。川や海の近くの駅の場合は即、地上に出て高い建物に避難する必要がある。



最近は地下鉄の地上入り口に海抜が示されている。水道橋駅入り口で5.4m、内幸町駅で3.5m。有楽町線月島駅では海抜0.9m! 最近は豪雨も多く、地上からの浸水対策が進んではいるが不安も残る。

日比谷は昔、日比谷入江と呼ばれ海水が入って来ていた。明治時代に現在の霞ヶ関から日比谷公園までを官庁街にする予定だったが、日比谷公園地下の地盤が弱く、計画を変更し、公園とすることになったという。ちなみに日比谷公園の地下には巨大な貯水池があり、災害時の給水所となる。このあたりの海抜が3.5mほど。




オリンピックは大丈夫か?

2020年のオリンピックの施設は図のようにすべて湾岸に設置される。その多くは東京湾北部岸壁部分となる。それと懸念されるのが選手村。晴海の岸壁部分の広場に作られるが現在は十分な防潮堤もない。3:11の時、晴海で1.5mの津波が観測されている。(ちなみに筆者が観察したところでは、勝ちどきの岸壁も海面から50cmくらいしかない。)今後、盛り土で対処するようだが、例え浸水しなくても地震体験の無い他の国の選手達は一応にパニックするだろう。また避難先も橋を渡らねばならず、大人数が一時に避難となると相当なパニックになることが予想される。今後、30年で70%の発生確立という首都圏直下型地震。東大の地震研究所によると4年で50%。そういう土地柄であることを頭に入れておかなければならない。もう想定外は許されないのだ。







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要請に応じてパワーポイントでの「防災啓発講演」を行っております。都内であれば、交通費のみ支給でボランティア奉仕致します。講演はパワーポイントで行いますので、プロジェクターとスクリーンのご用意をお願いします。お問い合わせは下記のメールまで。

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災害支援団体クラッシュジャパン次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定 防災士

栗原 一芳
crashkazu@gmail.com
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